期待が高まる最先端の薄毛治療「自家細胞移植」とは

最先端の薄毛治療についての考察です

昨年から複数の研究機関により、薄毛治療のための「自家細胞移植」研究が臨床段階に入っています。

 

 

すでに民間企業も参画して産業化を目指していることから、実現の可能性は高く、近い将来一般にも利用できるようになることでしょう。

 

 

本稿では最新の薄毛治療研究の中から現在もっとも注目されている「自家細胞移植による薄毛治療」について皆様に分かりやすくお伝えしたいと思います。

 

 

自家細胞移植とは

 

 

患者自身の細胞を採取し、培養して数を増やしたり、何らかの操作をしてから再び患者の身体に移植し、有意義な結果を得る治療法を「自家細胞移植」といいます。

 

 

よく知られたところでは悪性リンパ腫の抗がん剤治療に先立って自分の骨髄液を冷凍保存し、抗がん剤治療が終わってからまた体内に戻し、抗癌剤によって損なわれた造血機能を復活させる「自家造血幹細胞移植」があげられます。

 

 

もともと自分自身の細胞ですから、移植後の免疫拒絶がおこりづらく、移植のなかでも安全な方法だといえます。

 

 

薄毛治療にはどの組織をつかうのか

 

 

薄毛治療における自家細胞移植では男性ホルモン耐性が強い後頭部の頭皮を直径数ミリの範囲で採取します。利用するのは「毛包」という毛髪の根元の組織です。

 

 

毛包= 一般的に言えば「毛根」ですが、医学的には毛髪の根元とその周りをおおっている組織を含め「毛包」と呼びます。毛乳頭、毛母細胞、毛根鞘細胞、またバルジ領域などが含まれます。一本の毛髪はひとつの毛包から生産されます。

 

 

こうして採取した毛包からさらに目的の細胞だけを抽出して培養します。

 

 

抽出した細胞は培養技術で増やせるので、採取するもとの毛包の数自体は少なくてすみます。そのため採取時の痛みなど患者の負担も最小限ですみます。

 

 

それでは現在話題になっている最先端技術を3つご紹介したいと思います。

 

 

バルジ上皮幹細胞と毛乳頭細胞を使った毛包原基移植

 

 

まずご紹介するのは、理化学研究所・オーガンテクノロジーズ・京セラによって2016年から進められている「毛包原基移植」です。

 

 

原理を理解するため、あらためて毛周期(ヘアサイクル)の図を見てみましょう。

 

 

 

 

毛周期には「成長・退行・休止」の3つのステージがあります。

 

 

図を見ると、毛周期の各過程で毛包の深さが変わっていくことが分かると思います。

 

 

成長期に深部にあった毛乳頭部分は、退行期から休止期にかけて毛包全体が縮小するにしたがって、皮膚の浅いところまで上がっていきます。

 

 

そのため毛乳頭は休止期になると「バルジ領域」と呼ばれている部分に最も近づくことになります。

 

 

バルジ領域では「上皮性幹細胞」という皮膚・毛髪などに変化する細胞が作られています。

 

 

一方の毛乳頭には「間葉系細胞」があり、上皮性幹細胞を毛髪もふくめた毛包組織に作り変える役割をもっています。

 

 

休止期に毛乳頭とバルジ領域の接近するとこれら二つの細胞系が相互作用を起こし、次の成長期を引き起こす仕組みになっているのです(上皮-間葉系相互作用・EMI)。

 

 

この原理を応用したのが毛包原基移植による発毛の仕組みです。

 

 

手順としては、毛包からバルジ領域由来の上皮性幹細胞と毛乳頭細胞由来の間葉系細胞を取り出して培養し、それぞれの細胞塊を密着させ、「毛包原基」という種のようなものを作ります。休止期の両細胞系の隣接を擬似的に作り出すわけです。

 

 

こうしてつくられた毛包原基を皮膚内に移植すると、上皮-間葉系相互作用により毛包へと自律的に成長し、毛髪発生に必要なパーツが作られていくことになります。立毛筋や皮脂腺、神経などもすべて自然な毛髪同様に形成されます。

 

 

マウスによる実験では遺伝的に体毛がまったく無いマウス(ヌードマウス)に毛を生やすことに成功しています。

 

 

このように毛包原基移植の最大のメリットは何もない皮膚に埋め込んでも毛髪が発生することにあります。つまり原理的には毛髪の数をいくらでも増やすことが出来るわけです。しかも自細胞を使っているので、正真正銘の自毛と言えます。

 

 

毛包原基はまさに「毛の種」と言うにフサわしいですね。

 

 

研究グループでは2020年の実用化を目指し、すでにヒトでの臨床実験が始められています。

 

 

毛球部毛根鞘細胞の頭皮への移植

 

 

つぎにご紹介するのは、レプリセル社(カナダ)が有する知財をもとにした技術「毛球部毛根鞘細胞(DSCC)移植」です。

 

 

こちらは資生堂・東京医科大学・東邦大学医療センターのグループが2015年から研究を進めています。

 

 

患者の毛包を採取するまでは同じですが、そこから抽出するのは「毛球部毛根鞘細胞(DSCC)」と呼ばれる細胞です。

 

 

 

 

毛球部毛根鞘細胞(以下DSCC)は毛包の底部にあり、毛乳頭よりも下に分布しています。

 

 

このDSCCには下記のような役割があると言われています

 

 

  • 毛包の成長を誘導する(毛包誘導能)
  • 毛乳頭細胞の量を増やす(前駆体として毛乳頭細胞の元となる)
  • 毛乳頭の活性化

 

 

培養増殖したDSCCを脱毛部分の皮下に移植すると、DSCCは周辺にある毛包の毛乳頭に凝集します。(もともと存在していた場所に戻っていくのですね。)

 

 

すると毛乳頭がDSCCによって活性化され、髪の毛のもとになる毛母細胞の生産を再開するという仕組みです。

 

 

最初にご紹介した「毛包原基移植法」との違いは

 

 

  • 使う細胞は1種類 = DSCCのみ
  • 既存の毛乳頭に働きかけてその活動を促す

 

 

となります。

 

 

技術的な限界としては毛包が消滅してしまった頭皮には効果がない点ですが、通常の薄毛治療の患者さんの毛包は休止状態になっている(産毛になっている)だけですので、適用は十分に可能です。

 

 

資生堂広報によれば、2018年を目標に実現を目指しているとのことです。

 

 

iPS細胞を使った毛包の再生

 

 

さて、最後に紹介するこちらは自家細胞移植ではありませんが、杏林大学・大山学教授によるiPS細胞を使った毛包再現の研究も注目されています。

 

 

上記二つの研究と同様、上皮系細胞と間葉系細胞の相互作用による毛包発現という原理自体は同じですが、人体からの細胞採取ではなく、iPS細胞から作りだそうというもので、より学術的・基礎的な研究といった色合いが強いと思います。

 

 

それだけに瘢痕性脱毛症(やけど、きずあと)などといった毛包組織が完全に失われてしまった皮膚の毛包再生をターゲットにしているようです。

 

 

またこのような地道な研究によって、大衆向けの薄毛治療にブレークスルーが起こされることも常ですので、非常に頼もしく重要な研究と受け止められています。

 

 

現時点でわたしたちに出来ること

 

 

以上、最先端の薄毛治療研究を3つご紹介しました。

 

 

ご覧頂いたように、従来の薄毛治療とは一線を画した、細胞の仕組みそのものに深く切り込んだ研究でした。

 

 

こうしてみると現代に生きている私たちは本当に恵まれていますね。

 

 

これらの先端治療が実現して世界から薄毛が根絶されるまでは、今ある髪をキープして絶対に減らさないようにしたいと思います。

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